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よく驚かれるテレビ局の常識②
雑誌や専門紙などの場合、メディアにもよりますが、「この内容でよいかどうか、確認をお願いします」と記者から最終確認を求められることがあります。
それでは、テレビに取材された後、放送される内容を、事前に確認することはできるのでしょうか。
放送内容を事前に確認することはできない
取材が終わり、放送日近くになると時々、前に取材した企業から「事前に放送内容を確認できませんか?社長が放送前に内容を確認したいと言っているのですが…」という問い合わせが寄せられます。しかし、どんな理由があれ「放送内容を事前に見せることはできない」というのが答えです。どのテレビ局でもそのスタンスは同じです。逆に、もし放送内容を事前に見せてしまったら、大きな問題になります。
これまでにも、編集した放送用のテープを取材先や関係先に事前に見せてしまったことで、取材先あるいは関係先から圧力がかかり、放送が取りやめになった事件もありました。しかし、こうした事例はすぐに問題になり、批判の対象となってきました。
なぜテレビ局は放送内容を事前に確認させてもらえないのか
そもそも、企業が広告費を出して製作するCM映像などとは異なり、テレビ放送の編集権はテレビ局にあります。
さらに、放送は有限である電波を利用するため、放送法に基づき公平・中立な放送をすることが求められています。放送法第三条には「第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と定められています。
テレビ局がもし放送内容を事前に見せて、「ここを直して」「ここは削って」などと注文を受け、編集し直して放送したとしたら、それは公平・公正な報道と言えるでしょうか。テレビ局が取材先の言う通りの報道をしていたら、視聴者はテレビ局を信頼するでしょうか。
テレビ局は、視聴者から信頼されることによって商売が成り立っています。公平・公正な報道スタンスを貫くために、一切、事前に放送内容を見せることはできないのです。
もし、どうしても確認したいのなら
恐らく、放送直前に確認したい気持ちになるのは、テレビ局から「御社の○○の取り組みを取材させてください」と言われ、良い方向の取材として受けたのに、「もし、批判されていたら…」という不安が芽生えるからだと思います。
自分の記者時代の反省も含めて言うと、取材された企業と記者との間に信頼関係ができていない場合に、そのような気持ちが生まれる気がします。そのような不安を抱かないためにも、取材した記者とよくコミュニケーションを取って、信頼関係を築くことが大切です。
なお、放送の趣旨に変更がないか、ということを記者に確認することは、差支えありません。記者は内容について答えることはできなくても、答えられる範囲のことは答えてくれるはずです。
著者
木下 真樹子