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テレビ局はどのようにネタを決めているのか?
毎日発生する様々な出来事や、企業からの膨大な情報提供の中から、テレビ局は報道番組や情報番組でとりあげるネタを、どのように決めているのでしょうか。その疑問にお答えします。
“お茶の間”の人の気持ちになってみると分かることがある
「へー! こんなものが新しく発売されたんだ」。「へー! 今、こんなことがはやっているんだね」。テレビを見ているとき、このような会話が自然と湧き起こることがあるのではないでしょうか。視聴者のこの「へー!」という反応はニュースの報道記者や番組ディレクターにとっては、待ってましたと言わんばかりの反応です。世の中に起こっている、世の中の人がまだ知らないことを伝えるのがメディアの役目だからです。
情報源は何か?
視聴者に「へー!」と言わせるネタは何なのかをニュースの記者や情報番組のディレクターは、日々、探っています。情報ソースは、記者やディレクターが見聞きしてつかんだものもあれば、企業や官公庁からのプレスリリースからのこともありますし、突然、報道部にかかってきた一般の視聴者からの電話での情報提供ということもあります。このようにして集まった多くの情報の中から、今日のネタはこれだ!というものが選ばれるのです。
どうやってネタを決めているのか?
例えば、情報源の1つであるプレスリリース。これは本当に“山のように”来ます。1日に100近い膨大な数が届きます。どれが視聴者が必要としている情報か、今、放送すべき内容は何か、そんな観点でプレスリリースに目を通していくのです。そのときに、記者やディレクターが最も大切にしている感覚が、自分が「へー!」と思ったかどうかなのです。
自分に置き換えても同じだと思いますが、自分が知らなかったことを知ったとき、しかもその内容に対して、自分も同じことをやってみたい、見てみたい、買ってみたいなどと思ったときに、人は「へー!」という反応をすると思います。記者も同じです。ただし、一般の人と違うのは、毎日、新しいネタに触れているという点で、人よりも「へー!」と思うハードルが高いことです。
世の中やメディアに初登場のものや取り組み、その中から多くの人が共感し受け入れるもの、役立つもの、あるいは、これまでとは逆の視点で取り組んで成功したもの、こうした観点から取り上げるべきネタを決めています。
より多くの人に関わる情報を優先
中でも「多くの人が必要としている情報か、多くの人が関わる可能性のある情報か」という点が重要です。
例えば、新幹線が技術革新によって東京~大阪間の時間短縮に成功した話はテレビのニュースになっても、ある地域の路線バスが時間短縮してもニュースにはなかなかなりません。その情報を必要としている利用者の数が全く違うからです。地域の路線バスの時間短縮なら、新聞の地域版では扱われるかもしれません。一方、もし、これが路線バスの時間短縮ではなくて、客足が伸び悩む路線バスの活性化のための画期的な取り組みという内容だったとしたら、ニュースになるでしょう。同じように困っている他の地域のために役立つ情報だからです。
テレビ、新聞、雑誌などメディアによって取り上げる内容は違っても、テレビを見る人、新聞・雑誌を読む人が、高い割合で関心を持つ内容で情報発信しようというスタンスは同じです。その結果、見る人・読む人が増える、そして、その人たちの役に立つ。そのための厳しいネタ選びなのです。
著者 木下 真樹子